くらしの余白
ため息は、身体の「ほどき息」
川口 雅典
「はぁ……」
疲れたとき、困ったとき、思うようにいかなかったとき。
私たちは、ため息をつきます。
「ため息ばかりついて」
「ため息をつくと幸せが逃げるよ」
そんなふうに、ため息にはどこかネガティブなイメージがあります。
でも、少し見方を変えてみると、ため息は案外おもしろいものです。
ため息は、普段より大きく息を吸い、長く吐き出す呼吸です。
生理学には「physiological sigh(生理的ため息)」という言葉もあり、ため息には呼吸を整える働きがあります。
つまり、ため息は単なる「弱音」ではなく、身体が自然に行っている小さな調整でもあるのです。
そう考えると、「溜息」という言葉も違って見えてきます。
溜まったものを、息として外へ出す。
だったら、「ため息」ではなく、
「ほどき息」
と呼んでみてもいいのかもしれません。
「また、ため息をついてしまった」と思う代わりに、
「ああ、いま身体が、少しほどこうとしているんだな」
と気づいてみる。
無理に元気にならなくてもいい。
気持ちを切り替えなくてもいい。
ただ、長く吐かれていく息を感じてみる。
身体が先に現在へ戻り、
心があとから、それに気づく。
ため息は、もしかすると、
私たちの身体がずっと知っていた、
小さなマインドフルネスなのかもしれません。
ため息は、心の弱音ではなく、身体の調整音。
今日、ため息が出たら、
少しだけ、その息を見送ってみませんか。